平成15年12月22日

ハリ先について

淡水研 北関東支部

遠藤和彦

1.はじめに

かつてヒマラヤの麓、ネパールに滞在していた時、地元の漁師が釣り針を使わずに魚を釣っているのを見たことがあるが、こと日本国内では私の知る限り、魚釣りに釣り針は無くてはならないものである。釣具屋の釣り針コーナーを見てみると、そのハリの形、大きさそして重さなどハリの種類のなんと多いことか。そしてこのハリの選定に私たちは何と頭を悩ませられていることか。

コイ釣りをしていて、ウキがスーッと2〜3cm位沈むときがある。大きく消し込むアタリが来るまで待っていようとすると、またスーッと2〜3cm。ヨシッ、この次は、と意気込んでいるともうそれっきりで何も起こらない。空しくエサを交換する時に私は釣り針に聞いてみたくなるのである。「おい、ハリよ。今、何回コイの口に入ってきたんだい?」と。きっと何度か吸い込まれ、そして吐き出されたことと思う。最後は、吐き出されてそれっきり。

このハリがかりのメカニズムには、

@     ハリの形、大きさ、針先の鋭さ、

A     ハリスの太さ、固さ、長さ

B     エサの形や固さ、ハリにエサの付いている状態、

C     ウキ釣りの場合にはオモリの重さやウキの浮力、脈釣りや吸い込み釣りの場合には向こうアワセのオモリの重さ

D     コイが摂餌する時の緊張感の度合い

などなど、さまざまな要素が関連しているにちがいない。全く考え始めると際限が無く、それらひとつひとつを解明していくには、結構な時間と根気がいることと思う。とても私一人の頭で考えきれるものでもなく、会員諸兄の今後の検討に待つこと大である。

そこで今回は、最近ようやくわかってきた「針先の鋭さ」について考えてみたい。


針先の究極の目的は、「一度コイの口に入ったら最後、口腔内にチクチクとまとわりついてなかなか外に吐き出されない。そのうちにアワセが入って、ガッチリと針掛りする」、ということだと思っている。こんな針先ができないものだろうか。

2.市販品の針先

手元にあった市販のハリをいくつか試してみた。市販のままのハリを袋から取り出して、親指の爪の表面に当ててみて、刺さり具合を4段階で評価してみたところ、表1のような結果となった。メーカーによっても相当なバラツキガあるが、モドシ(アゴ)の無いスレ針の方が比較的針先は鋭いことがわかった。しかし、口腔内にまとわりつくには、こんな結果ではとても満足できないのが釣りキチの宿命である。100倍の顕微鏡で見た様子は、円内に示すとおりである。

表1.市販ハリの鋭さ

 

 

 

 

単位:[本]

メーカー・号数

爪に吸い付く感じ

一応刺さって滑らない

ガリガリと引っかかりながら滑る

全く刺さらず滑る

記事

がまかつ海津20号

0

3

3

4

10

(10本\200)

もりげん海津20号

0

5

0

1

6

(6本\150)

フカセ針 18号

0

1

1

8

10

(25本\800)

マルト鯉角スレ17号

0

5

9

6

20

(100本\520)

0

14

13

19

46

 

図.1 鋭い針先 図.2 丸い針先


1に示すような鋭い針先のハリは、市販品ではほとんど得られない。刺さりやすい反面、ちょっとどこかへ針先が触れた場合でも針先が鈍り易い欠点がある。図2のような初めから鈍っている針先は、焼き入れ等の製造過程や工場からの運搬時にハリ同士が触れても鈍りにくい特長がある。したがって、市販品のハリは爪に当てても半数以上が爪の表面をスルッと滑ってしまうか、または表面をガリガリとこすりながら滑ってしまうのはやむをえない。

2.鋭い針先をめざして

何としても口に入ったらまとわりつくハリを得るためには、自分で研ぐしかない。砥石は、目の細かい砂岩片やIC用のセラミック基盤など試してみたが、アーカンサスのオイルストーンがベストであろう。オイルストーンにマシン油を1滴たらしてシコシコと研ぐのである。ここ10年ほど1個のオイルストーンを使い続けているが、全くといっていいほど、その表面は磨耗していない。

(1)  研ぎ方

ハリの断面は、●形であるが、その上下左右を■形に研いでいく。▲形に研いだ方が、より鋭角な針先になるのであろうが、斜めの部分を研ぐ際に巧く角度を一定にしずらいので、私は単純に砥石の表面と針を持つ手が水平・垂直に固定しやすい■形に研いでいる。

研ぐといっても、市販品を初めて研ぐ際には、グリグリと削り落としていくのではなく、図3のように針先の黒色塗装されたその塗料を矢印の方向に擦り落とす感じである。

     針先の左右両サイドは、ハリのチモトから先端に向けて砥石を5回ほどサラサラサラと動かしていく。

     針先の上面は、先端から5mmくらいチモト方向に戻った辺りを10回ほど同様に動かしていく。

     針先の内側は、図4のようにハリのフトコロ部へ砥石を置いて、針先を砥石の長手方向へ左右へ10往復くらい動かしていく。この内側の研ぎ出しが針先のキレを良くするコツである。

図3.針先の研ぎ方(1) 図5.針先の研ぎ方(2)
図4.ハリの内側の研ぎ方

       
研いだ針先 曲がった針先

実釣した後で、図5のように鈍った針先を研ぐ際には、釣りの現場で研ぐことはせずに他の研いであるハリと交換する。もっとも、針先の曲がり方にもよるが、目視で曲がっているとわかる針先は、研いでも無駄である。というのは、曲がり部分を砥ぎ落とし、さらに先端を上下左右研いでいるうちに針先の焼き入れ部分がほとんど無くなってしまい、市販の針金のような固さの針先しか残らない。指先に針先を当てて擦ってみて、ややザラザラと指先に感じるくらいの針先の曲がりの時に、研いで再使用となるのである。ちなみに新品の海津針の針先の長さと、5回研ぎ出して再使用した場合の針先の長さをそれぞれ10本、実測した結果を表2に示す。

表2.針先の長さ

 

 

 

 

 

 

 

針先長の実測値 [mm]

平均値

新品

11.5

11.4

11.4

11.5

11.4

11.45

11.5

11.4

11.5

11.5

11.4

5回目の研ぎ出し

11.1

11.0

11.0

11.1

11.1

11.12

11.1

11.2

11.4

11.2

11.0

この測定結果から、1回針先を研ぐと、0.070.1mm針先が短くなることがわかる。

ハリの種類にもよるが、針先を研いで再使用する場合には、3回〜5回が限度であろう。実際に海津針を5回目に研ぐ際には、なかなかハリの先鋭化ができず、1本の針先を研ぎ出すのに5分以上の時間を要した。それでも納得できる先鋭化ができないこともあった。

(2) 顕微鏡のすすめ

私は現在、針先を研ぐために100倍の倍率のオモチャの顕微鏡を使用している。使いづらいが、何とか用は足りている。10倍のルーペも使用してみたが、針先の状態がわかりにくく、どうも30倍くらいの倍率は必要に思える。肉眼では鋭く見える針先でも、顕微鏡で見ると何と鈍っていることか、よくわかる。これだから爪に刺さるとか、吸い付くような感じになるとか・・・。予算が許せば、40倍程度の双眼実体顕微鏡がほしいところである。

(3)  研ぎ易いハリの形

針先の形状により、フカセ針や伊勢尼等の針先が内側にカーブしているものと、セイゴ針や海津そして鯉スレ針等の直線型のタイプに分けられる。カーブしているタイプは、針先の内側が砥ぎづらい。また直線型の針先でもモドシの付いているものと付いていないものとで比較すると、モドシの付いていない方がより鋭角に研ぎ出せる。この理由から、私は専ら海津針のモドシをペンチで潰したものか鯉角スレを使用している。

3.最後に

この針先の先鋭化をするようになって以降、極端に釣れ出したということはまだ無いが、少なくともこれまでよりコイの口腔内にまとわり付きやすくなったと言えると思う。欠点は針先が鋭い=細くなったことにより、曲がり易くなったため、ウキ釣りではさほどでもないが、河川での脈釣りの場合には玉石に触れやすく、ほとんどエサ交換の度に針交換をしなければならなくなった。そこでハリの交換をし易いように、Y字型ハリスを止めて、一本針のハリスを2本、ヨリモドシにつけて使用している。

次の課題は、いかにハリがコイの口に刺さるのか、考えてみたい。

END

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