【テキスト】 野ゴイ釣り・ネリエサの使い方     小西茂木解説 (昭和50年8月)

 

雑食性のコイや草魚連魚には動物質と植物質の材料を自由に混合できるネリエサの有利なことは、いうまでもない。市販エサの中で最も優秀と思われる○九印「大ごい」をテキスト材料として、じょうずなネリエサの使い方を考えてみよう。

粉の練り方 水を入れて粉をかきまわし、また水を入れてかきまわし、トウフガラのように仕上げる。これが寄せ打ち用の荒練りだ。○九「さなぎ油」があれば申し分がない。一びんの半分を荒練りにふりかけ、やわらかいモチのように練りあげる。これが食わせ用、標準調子の本練りだ。「さなぎ油」は食いのしぶい時に、特に有効だ。

季節と水の状況によって練り方を変える】 魚の活気の乏しい冬、冬でなくても食いしぶりの時には、やわらかめの本練りとし、エサ玉を少し小さくする。フナ、ウグイなど特に小物の多い場所では、本練りの上に「大ごい」の粉をふりかけて、堅いめに練りなおす。いくらか流れの強い場所や、夜釣りでは少量の「寒梅粉」をまぜて、やわらかいがネバリの強いネリに仕上げる。

エサの打ち方 大物は大エサでなければ釣れぬ。野ゴイ釣りの標準バリは角セイゴ18号、ネリ玉の大きさは親指2つ分ぐらい。釣り人が多くてコイが落ち着きをなくしている時、気象条件がよくないと思われる時などは、荒練りエサで寄せに努力しなければならない。激しい水音をたてないように注意して、静かにたびたび、ポイントの一点に打ち返す。ただし、エサが広い範囲にちらばっては逆効果だ。同一点に狂いなく打ち返すには、リール投射に熟練しなければならない。多くのコイ釣り師はエサの良否を口にする。だがエサの使い方の巧拙により以上の注意を払わなくてはならない。

エサの打ち方に変化をつける 水底にあるエサを発見してコイが寄ってくるまでに、かなりの時間のかかる場合が少なくない。野球ボール大のエサを1回投下するよりも、それを10回にわけた方が早く気がついて寄ってくる。これらの事実によっても打ち返しの必要なことが理解されよう。釣りはじめてしばらくの間は、5,6分に1回程度の打ち返しをする。たしかにコイが寄っているのに食いこまないと思われる時は、連続で数回打ちこんでやると、やがて強いアタリのでることがある。寄ったコイの数が多ければ、アタリは早く、少なければかなりの時間がかかる。2時間も打ったのにアタリがないという時は、本練りエサをもう一度ていねいに練りなおし、大きいめにエサづけして、3、40分待つのも一つの方法だ。

寄せ・食わせ兼用ネリ玉 寄せの荒練りと食わせの本練りを同時に打つことができれば申し分ないが、二種のネリを用意しハリにつけ分けるのは、少々めんどうだ。そこで考えたのが兼用ネリ―――本練りエサを手もとに用意の水にざぶりとつけ、数回もみほぐし、玉のシンの方は手応えのしっかりした本練りだが、表面はベタベタ、ヌルヌルにしてハリづけするのだ。このエサを打てば、においとこまかい粒をまきちらしながら沈下、目覚しい効果がある。

打ち返し、そして待つ たびたび打たねば寄りがおそいが、しかしエサに食いつくひまも与えずサオをあげては、ハリにかからぬ。3回打って10分待つか5回打って15分待つか、そのタイミングが少々むつかしい。しかしサオを2本ならべて使えるなら、この問題の解決はかんたんだ。1本は寄せ打ち用、1本はじっくり待つ食わせ用を使いわければよい。2本ザオなら、サオはもちろん、リールも道糸の太さも同じものの方がよい。

備考 「大ごい」エサにまぜ物をする人がいるようだが、余計なものをまぜると、製造のときに計算されたネバリとバラケぐあいのバランスが狂って、「大ごい」本来の良さをいかして使えない。ぜひ自分の使いたい材料があるなら、○九印「鯉えさの素」をベースとして配合し、自家製エサを作った方がよい。