鯉ルアー!
東北支部・笠岡 庸志 

○ルアーと鯉

 一昔前だったら、ルアーで鯉が釣れたと聞いても、「間違ったのだろう」、「珍しいことがあるもんだ」と偶然の出来事ととしか受け取らなかった。やがて数的には少ないが、時折、バス釣りのルアーにかかるようになると、鯉の中には変わり者もいるのだとルアーと鯉の関係を一応、認識理解するものの、積極的にも消極的にもルアーを用いる鯉釣り師は一人もいなかった。
 五、六年前、「都会のコイはフライで釣れ」という本が出版され、多摩川におけるフライによるコイ釣りを紹介しているが、関心はもったものの、実釣にはまり込んだ人は少なかったようだ。邪道としか映らなかったのだろう。
 やはり鯉釣り師はエサ釣りにこだわり、如何なるエサが釣果に結びつくかに腐心するのが主流なのだ。
 
決してルアーやフライを毛嫌いしての考えではない。例えば、いも〜いも羊羹〜ザリガニ〜ぺヘレィ〜たにし〜ボイリーと変遷の足跡がある一方、パンプカ釣りやパックン釣りのように新たなエサとその特性に即した釣法も開拓されてきているのだ。

○発泡吸込み

 やはり鯉釣りにはルアーやフライは馴染めないのだ思っていたところ、発泡吸込みという釣法が高橋会員によって考案され、大きな成果を収め注目を浴びた。ダンゴの傍らにある空バリに発泡スチロール片を付けることにより、コイに興味をもたせ吸い込ませるのだ。なまじ喰わせエサを付けるより効果が高いようだ。しかし、主体はダンゴであり、疑似餌釣りの範囲には入らないだろう。

「発砲吸い込み仕掛け」

○鯉用ルアーの出現?

 そんなことを漠然と考えていたところ、コイ用のルアーが出現した。
東北支部の阿部会員が見つけ出してきたのだ。その鯉ルアーで、仙台市郊外を流れる二級河川の支流で60UPのコイを30尾も釣り上げたのである。しかもアタリの3割以上をバラしたとのこと。まさに鯉ルアーおそるべしである。

○小林重工の「・・・コ式」ルアー

 そのルアーは「小林重工」の『MP65コ式』。コイ専用に作られたルアーである。
「小林重工」とは何なのか?会社名でも店舗名でも工房名でもないようだ。
ある関連サイトに
『今をときめく鬼才マレッターズ小林良彰のブランド小林重工。
 もはやよけいなコメントは必要ないでしょう』
とあった。小林氏はその道ではかなり名の知られた神様のような人らしい。
また、「重工」は決して重工業の重工ではなく、ブランド名として用いているようだ。
なぜ「重工」なのか。謎めいて興味と関心が深まる。
そもそも小林重工では鯉用ルアーはカテゴリーにも入らないオマケ的存在のようだ。
やはりバスやトラウトといったルアー本来の対象魚用品が主体であり、種類も数も圧倒的に多い。
 「コ式」は鯉用、「ラ式」は雷魚用を示すが、隅っこの存在みたいだ。

『MP65コ式』
 直径約20mm 長さ65mm の白色軟質発泡スチロール棒

*画像はsuperbushHPからお借りしました。
中に錘を埋め込み棒の片方に道糸連結具。別端にハリス連結
ハリス長30mm&40mm カエシのない2本バリ

○『銀座型コ式』

 「MP65コ式」の改良後継アイテムとして発売されているようだ。

*画像はsuperbushHPからお借りしました。

 これは「MP65コ式より10mm短い造りで発泡スチロールの色は6種類ある。
カエシのない2本バリでハリス寸法は変わらない。

なぜ「銀座型」なのか分からない。
 往年の石原裕次郎が歌い大ヒットした「銀座の恋の物語」をもじったとしたら、なんと粋でオシャレナな命名だろう。

○使用法等

 この小林重工のルアーの特性、効果、使用法、注意事項等カタログ的なこと書いたものはどこにも見つからなかった、広く実績が伝わり、周知されているので敢えて必要ないのかもしれない。事実、扱い店では「品切れ」の標示が多くあった。
 このルアーを扱っている店等のサイトには、断片的だがそれらしいことが書かれているのでそれを拾ってみると

●小林重工のカープフィッシング用のベイトです。フックに餌を付けなくても使えます。
ハリにパンを付けて使用します。コ式製作者小林氏オススメは、「○芳醇」「○感宣言」。ハリ持ちが違うそうです。 パンだけを小さくちぎり流します(チャミング)。鯉の捕食を確認し、コ式にパンをつけ、上流から流しこんで下さい。鯉に対してパンが先行するように注意し、出来るだけ自然に鯉―パンーコ式−ラインとなるよう流して下さい。ラインはちょっと太めのPEが扱いやすいです。止水域でも使用可能です。
● 鯉のトップウォーターゲーム用アイテム。フックにパンを付けて使用.コ式が飛ばしウキ的役割を果たします
● アクション不用。着水時の音と波動で寄せて食わせるルアー。
と、こんなことが書かれている。

○本格的ルアーか?飛ばしウキか?

 餌を付けなくても釣れるのだからルアー、軽い餌を遠くに運ぶためであれば飛ばしウキ.どちらに区分すべきか・・・。
考案者は試釣と検討を幾度となく重ねて製品化したものであろう。
阿部会員によると、普通の飛ばしウキを投げると鯉は散るが、コ式では平然としているそうだ。また、発泡材に興味を示し、横から突っつく鯉もいるそうだ。餌が付いてなくても興味を持ち反応を示すのだからルアーの部類なのだろうか。
北海道支笏湖のチップ(ヒメマス)をスプーンで釣っていたとき、フックにミミズを付けると付けない時の倍以上の釣果があった。餌はルアーの機能を倍増させると考えることも出来る。まあ、厳格な区分けは釣り人が使い方によって決めればいいと思う。
ちなみに阿部会員はコ式は飛ばしウキでパントレーラーと認識しているようだ。

○楽しみ

 自作も出来る。目くじら立てずにタックルケースの隅にでもしのばせ、鯉の群れを見たとき、増水で一箇所に溜まっていそうな時、潮の干満で動きが活発な時等コ式を使ってみるのも楽しいのではなかろうか。

 

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