東北支部 笠岡 庸志 顧問


釣りキチへの道程

 振り返ってみると、熱中の度合いにバラツキはあるが、約70年間釣りを楽しんできたことになる。大別すると少年期の何でも釣り10年、青・壮年期における鮎を含む渓流釣り30年、熟年期以降の鯉釣り30年と言ったところだろうか。すべて淡水魚。海釣りは付き合いで2回ほど行っただけ。生来、不器用なので川も釣り、海も釣るということは苦手なのだ。
各転換期にはそれぞれ大きな理由があった。特に渓流釣りの後半期は周辺から注目されて、自惚れと自信過剰になり、かなり無謀な釣りに走り、遭難寸前になることや、熊と遭遇することも多くなってきた。
中学、高校、大学、社会人と38歳まで現役でラグビーを続けていたし、40歳を過ぎて日本スキー連盟のインストラクターの資格をとり活動していたので、体力的には人に負けないと思っていたが、反面、それらスポーツで受けた骨折、脱臼、捻挫、靭帯損傷等の後遺症が自信を揺るがしていった。「このままでは他人様に迷惑をかけることになる。」そうなる前に区切りをつけようと思いはじめた頃、小西先生の著書「淡水大魚釣り」に出会った。

○鯉キチへの転換 淡水研入会

正直なところ内容は半信半疑だったが、目に見えぬ強烈な力で引き付けられたのも事実。もともと鯉について関心と憧れをもっていたが、キッカケもなく他人事としかみていなかった。
当時、北海道で勤務しており、幻の大魚「いとう」を追いかけていたので、この「淡水大魚釣り」の中に「いとう」が述べられていないのが不満で、小西先生に質問の手紙を出した。「いとう」は北海道にしか棲息していないので万人向けの対象魚にはならないとの返事であった。「それならレンギョ、ソウギョだって地域が限定されるではないか」と反論した。そんなことがきっかけで小西先生との文通交際が始まった。

この頃から「つり人」や「フィッシング」といった釣り雑誌に淡水大魚釣りに関する記事も増え、私の興味も大きくなっていた。先生から入会の勧めがあり千歳から仙台に転勤になったのを機に、昭和53年に淡水研の門を叩いた。時に齢48歳。すべてに「トウ」が立ち過ぎていた

○淡水研の鯉キチ修行?

会員は北海道から九州まで散在しており、雑誌で名前を知っているベテラン会員も多くいた。
特に仙台には小西先生の愛弟子であり期待をかけていたUさんほか10名ほどの30歳前後の若い鯉釣り師がいて活動していた。彼らと顔合わせをしたとき、別世界に迷い込んだと錯覚するほど彼らの鯉釣りに対する情熱は異常で、キチガイにも神様にも見えた。50歳を目の前にしてこんな鯉釣りに入っていけるだろうか。不安が頭の中を渦巻くばかりだった。
竿はNFTの磯竿・石鯛竿を改造、リールはABU、道糸はストレーン、ハリスはダクロン、連結具はクレーンスイベル・ワイヤースナップ、えさは舟和のいも羊羹。一般の釣具屋にはなく、八方手を尽くして探し出し、取り寄せなければならない。
特にUさんは研究熱心で、竿は徹底的にバラし、ガイド、シートを付け替えてバランスをとり、塗装を重ね、使うのが勿体無いほどの美術品に仕上げたり、有線報知器を考案したり活発な活動をして周りに影響を与えていた。

初めは目を白黒させて戸惑っていた私も次第に感化を受け、鯉釣りの泥沼にはまり込むのに時間はかからなかった。渓流魚は「動と攻め」の釣りだが、鯉は「静と待ち」の釣り。若い先輩は手とり足とり教えてくれることはなく、見よう見まねで学んでいるうち、気がついたら先輩達も呆れる救いようのない鯉キチになっていた。

○鯉キチ道驀進

鯉キチの特性として数や型にこだわりをもったこともあったが、やがてその時、その場の状況を分析し、最適と判断する釣法を考え実行することが楽しくなってきた。知識も必要だが実釣経験の積み重ねを重視した。もちろん、惨敗の方が多かったが、その反省が次への闘志と希望をもたらした。

会も秋田、仙台、北関東、琵琶湖等に支部が結成され、支部間の交流も盛んになった頃、有名なY氏による新クラブへの勧誘が激しくなり、四,五人が会を離れ、支部の活動は低調になったことがある。小西先生もかなり心配され何回もアドバイスを頂いたが、私もしばらく会を離れることで承認された。その後も小西先生や旧友との交誼は続いたが、会を辞してはじめて会の良さ、素晴らしさを痛感した。平成5年出戻り復帰を認められ、仲間に迷惑や面倒をかけながらも鯉キチの道を楽しく歩んでいる。

淡水大魚の釣りクラブ組織の草分け的存在に満足することなく、強い絆で前向きに積極的に活動いるのは他にいい影響を与えている。また、年齢、職業、経験にかかわらず会員一人一人の人格を尊重しての会運営は明るく和やかな人間関係を醸成している。
そして会の趣旨に賛同して集ってきた仲間も謙虚で研究熱心で素晴らしい人ばかりだ。

私はこんな淡水研および仲間が大好きだ。会の一員であることと仲間の厚い友情に誇りをもち感謝している。
私達の釣りは趣味のものだ。どんなことがあっても仕事や家庭・家族あるいは社会に支障・迷惑を及ぼすことがあってはならない。また、魚も命をもっていることを忘れてはならない
素直で謙虚、すべての人に礼節を尽くせ。友の釣果を心から祝福できる釣り師であれ。等々色々なことを学び実践に努めてきたつもりだがまだまだ未熟である。
あと何年釣りが出来るか分からないが、釣りをやめても会員でいたいし、仲間でいたいと願っている。

現在使用しているタックル
常 用 担ぎ込み
竿  NFT AD 振出石鯛 540MH  NFT 翔舟かかり 1号 425
リール  ABU 9000C  ABU 7000
道糸  サンライン スーパー鯉 10号  サンライン スーパー鯉 8号
おもり  相川型 T1  相川型 T2
ハリス  よつあみ ウルトラダイニーマー巨鯉10号  よつあみ ウルトラダイニーマー8号
ハリ   ソイ18号・ささめ 巨鯉魁20号
 ステキ針 フカセ魁18号
  ソイ17号・ささめ ソイ五目18号
仕掛け   吸い込み3本ハリ   吸い込み3本ハリ
センサー  コムテック フィッシャーマン  自作 無線式
竿たて  山田製作所製 ピトン式  自作 打ち込み式
タモ  80cm枠  四つ折70cm枠
ここ10年、ダム釣行をしないため山岳テント等とともに出番なし。
竿は改造し超遠投可能